「歴史問題」に対する中国の民間輿論分析
――中国人慰安婦裁判判決に対する中国民間のインターネット言論を中心に

張剣波

一、判決と中国での反応
2004年12月15日15時半、東京高裁、控訴棄却判決。
同日17時50分（北京時間。東京時間は18時50分）、新華社、最初の配信。
「日法院（馬爻）回中国慰安婦要求日政府謝罪賠償請求」
「新浪」(www.sina.com.cn)、記事を転載
18時26分29秒、ユーザーによる最初の書き込み（コメント）。
16日11時03分36秒までの約16時間半の間にコメント1000件。

二、幾つかの説明
１．インターネット言論、中国のインターネット言論の特徴
�@中国の民間輿論そのものではない。
・人口13億人、インターネットユーザー9,400万人（2004年末）
・ 若手層、知識層が多く。
�Aインターネット言論の共通特徴：過激的、極端的、無責任的になりやすい。
�B制限がある。「管理者」制度。
２．インターネット言論を取り上げる理由
�@最も直接に中国国民の感情を反映し、国民世論の重要な側面である
�A若手層、知識層が多くため、特別な意味を持つ。
�B本音が最もよく出る側面もある。
�Cインターネット言論だけでなく、日中関係における問題点だけでなく、経済や
文化、人的往来などを総合的に見なければならないが、一方、日中間の問題点に
直視する必要もある。
３．「新浪」はアメリカ資本とアメリカと関係を持つ中国系資本、アメリカ留学経験を持つ
中国人の運営。「親米」、「反日」傾向あり。
４．「人民網」との比較。「人民網」は15日の夜9時21分に慰安婦裁判判決関連の
ニュースを載せ、次の日早々このニュースをトップページから非常に見つけにくい場所
に移動。

三、書き込みについての分析
・ 方法。書き込みの内容の性格によって区分ける。一つの書き込みを2つ、3つに区分けることもある。（分類の総数1106件）
１．裁判に対する中国人の関心が高い。
２．書き込み者は、若い世代で、教育水準が高く、安定した職業を持つ者が多い。
時間帯（表１参照）、16日朝8時から10時の間の書き込みが全体の62.9％。
３．判決に対する反応が非常に厳しい。（表２参照）
・ 書き込みの圧倒的数は、復讐論、憎しみ論、強硬論、批判論。
厳しい論調は全体の90%を超え、約40％が復讐、憎しみ類。
・ 最も多く見られる論調は復讐論。
・ 現在の具体的テーマへの言及は、日本製品のボイコットと日本の国連安保理
常任理事国入り反対。
４．裁判自体を越えて反応する。
日本、日中関係に向ける書き込みが圧倒的。中国自身のあり方などを論じるものも。
５．日本国家・民族に対する批判。
・ 毛沢東時代：階級論。悪いのは日本の軍国主義、搾取階級、日本人民は
中国人民の階級兄弟、同じく日本軍国主義の被害者、犠牲者。
・ 現在：民族論。特定の階級よりも日本民族そのものに向ける。
６．日中関係に消極的。
７．裁判への直接反応。
日本人市民、弁護士に感謝。

四、結びに代えて
１．「歴史問題」に対する中国人の関心が高く、日本の国家イメージ、日中関係、
国際舞台における日本との付き合いと結び付けてこの問題を見ている。
２．最も深刻な問題は、中国人の日本認識、対日感情の性格である。日本の
責任逃れ、侵略美化に対し、中国人の言論は、「日中両国人民の友好」から
「やられたらやり返す」のような原始的な発想に戻りつつある。日本人の対中
感情も悪化しているということを合わせて考えれば、将来、日中関係に深刻な
危機が生じる危険性が潜んでいると重く受け止めなければならない。
３．如何に解決するか。（「和平と和解を考える会」の試み）