《シリーズ・『裁かれる細菌戦』 vol.3_122ページ》






下することを示している。さらに、これらの低温で保存したペストノミを、三〇〇回転一五分間遠心し、その後のペストノミの生死、保菌の状況を調べるという、奇妙な実験が行われている。この実験はさらに、(一一)のペストノミの強靭性についての報告の中で詳細に検討されている。この報告では、ペストノミの遠心回転による抵抗性は回転数毎分一〇〇〇回、二〇〇〇回、三〇〇〇回、遠心時間も五分、一〇分、二〇分、三〇分と条件を細かく設定し、さらに供試されたノミが羽化後の日数によって異なるのか否か、検討している。その結果、回転数、回転時間によってペスト保有ノミの生存率は殆ど影響を受けないことを確認している。

第四節 細菌戦部隊が行っていた研究にみられる閉鎖性と疑問点

 一九四〇年から一九四二年当時、七三一部隊および七三一の姉妹部隊である南京の栄一六四四部隊における研究の一部についてみてきた。とくに、高橋報告にある「農安および新京のペスト流行の疫学的研究」が、なぜ「丸秘」扱いなのか理解し難い。農安および新京で流行したペストが自然流行による発生であるなら、調査研究成果は公表されるのが常識である。
 ましてや、ペストに罹患して死亡した患者の剖検結果が、「トップシークレット」扱いの「Qレポート」として米陸軍に提出されている意味は何なのか、一九四〇年の「農安および新京のペスト流行」が七三一部隊による人為的流行であった疑いが濃厚である。
 

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