《シリーズ・『裁かれる細菌戦』 vol.3_13ページ》






九月十九日。外務省には復員局がないので、これは厚生省復員局のことであると思われる。)。

 この資料は、まったく公開されていないが、その背景には、防衛研究所の戦史資料の公開に関する内規が深く関係している。

 すなわち、一九八〇年の閣議了解「情報提供に関する改善措置等について」(五月二七日付)に基づいて、防衛庁は「防衛本庁における情報提供に関する改善措置等について」(八〇年九月一八日、防官総第四五一八号)という通達を出した(以下、秦郁彦『現代史の争点』文芸春秋・一九九八年・二八二─二八三頁による)。

 これを受けて防衛研究所は、「戦史資料の一般公開に関する内規」(一九八二年一二月)を定めたが、その第四条で、@プライバシーの保護を要するもの(略記号はP)、A国益を損なうもの(N)、B好ましくない社会的反響を惹起するおそれのあるもの(S)、Cその他公開が不適当なもの、と判定した場合は公開しないと規定しているという。

 そして、同日付けで作成された「公文書の公開審査実施計画」には、Nに該当するものとして、「外国人(捕虜を含む)の虐待」「略奪及び虐殺等」「有毒ガスの使用」などが例示され、Sに該当するものとして「細菌兵器の実験についての報告・記録」「細菌兵器使用の疑いを抱かせるもの」などが挙げられているという。

 このように、七三一部隊等に関する重要な資料は、好ましくない社会的反響を惹起するおそれのあるもの(S)、または国益を損なうもの(N)として、予め非公開措置が取られているので  

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