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[第5回裁判] 王選さんの陳述(3)

一、今年の一〇月一二日から一八日までに、華僑の国際団体である「世界抗日戦争史実維護連絡会」(以下「史実維護会」と略します)は、カナダのトロント市で、トロント大学と共催で、第三回大会を開きました。

 この大会のメインテーマは、「アジア太平洋地域における第二次大戦中の残虐行為・人文教育及び国際的正義」に設定され、中国大陸、台湾、香港から学者、華僑団体代表及び米加在住の日本人、さらにユダヤ人学者、団体代表など各国の人が参加しました。

 私は、二年前にサンフランシスコ市で開かれた第三回大会に、日本の市民運動の友人と参加しました。その時点では、私たちは細菌戦裁判を起こす準備を一所懸命やっているところでした。今回は、私は、この法廷で審理されている七三一部隊細菌戦訴訟の中国人原告の代表として、「史実維護会」から正式招待を受け、トロント大会に参加したわけです。 私は、貴重な時間を割り当てていただき、東京地方裁判所で行われている裁判の経過や、訴訟の最新状況、そして中国各地の原告の気持ちや活動状況、被害者連絡会や調査委員会など地方の人々の訴訟活動、被害者記念の活動などについて詳しく報告しました。

 私の報告が終わると、満員の会場から、大きな拍手が次々と送られ、最後には会場にいる全員が立ち上がって裁判への関心と協力を訴えた私の発言を支持してくれました。


二、アメリカとカナダで、今年六月末から、「史実護会」が中心になって、各地元の日本人やユダヤ人団体と共催で、第二次世界大戦における日本軍細菌戦など戦争犯罪写真展と証言集会を開きました。この内容やアメリカ・カナダでの反響については、すでに土屋弁護団長が七月の裁判の時に報告されました。

 その後、その写真展と証言集会は、中国の全国紙人民日報、中国中央テレビによって中国全土にも報道されました。それらの中国でのマスコミの報道によって、この細菌戦の訴訟が、多くの中国の人々に伝えられるとともに、細菌戦裁判が世界中の人々から支持を集めていることを中国にいる原告たち、被害者連絡会、さらに調査委員会の人々は、知り、本当に強く励まされました。


三、もう一つのアメリカでの展示会の影響について、裁判官にお伝えしたいと思います。アメリカの国会議員で国会人権組織の主席を務めているナンシー・パロシイ氏が、七月の始めに、この展示会をサンフランシスコで参観しました。彼女は、「旧日本軍の戦争犯罪が人類史上最も残酷な罪である」と感想を述べております。そしてナンシー議員は、この展示会を首都のワシントンD.Cでも開催するよう運動を始めています。

 また、「史実維護会」は、ニューヨークから代表者を派遣し、この展示会で展示されたものを持って中国を訪ねる予定です。細菌戦裁判の被害各地にいる原告たちや被害者連絡会・調査委員会は、それらの展示物を、中国各地で、特に地方の学校で展示することを計画しています。

 その代表者は、また一一月一八日に被害地祟山村で開かれる第一回目の義烏市全域細菌戦被害者記念大会に出席します。


四、最後に裁判官に是非お伝えしたいことが一つあります。今日の裁判には、アメリカの歴史学者でカリフォルニア州立大学名誉教授のシェルダン・ハリス氏が傍聴席にお見えになっています。

ハリス教授は、歴史家の立場から、日本軍細菌戦犯罪が、日本とアメリカの結託によって、この半世紀という長きにわたり隠蔽されてきた事実を、貴重な資料を分析して暴き出す研究を続けてこられました。

 ハリス教授は、日本軍細菌戦の研究者として、先ほど述べた今年六月から開かれたアメリカ・カナダでの展示会・証言集会で基調講演者として「アメリカと七三一部隊の犯罪の隠滅」について話をされました。

 また今月二一日には、アメリカの「全国社会科会議」(”The National Cou-ncil on Social Study")で、学校教科書における第二次世界大戦史の内容に日中戦争史を含めることの重要性について、講演をされます。この会議は、アメリカを中心に世界各地から五千人の教育者が参加するもので、大きな影響を与える会議です。

 ハリス教授の名作「殺人工場・日本軍の細菌戦一九三二年〜一九四五年及びアメリカの隠蔽工作」は、近く日本語に翻訳される予定です。

 最後に、ハリス教授が、細菌戦被害者が起こしたこの細菌戦裁判に重大な関心を持たれ、歴史の真実を明らかにするために裁判所に提出する専門家意見書を準備されていることをお伝えして私の陳述を終えます。

以上